股関節脱臼(大腿骨頭切除術)

今回は高齢のわんちゃんで、股関節を脱臼してしまった子をご紹介します。

症例は13歳、去勢雄のトイ・プードルさんです。

他院様にて右の股関節脱臼と診断を受け、痛み止めの注射をしてもらった後に、今後の治療相談のため、当院に来院されました。

当院へ来院された際、右後肢は挙上しており、脱臼は続いていることが予想されました。

レントゲンを撮らせて頂き、やはり右股関節の脱臼が確認されました。

覚醒下(意識がある状態)では痛みで力むため、股関節脱臼の整復はできませんでした。

脱臼している状態では痛みが続き、3本足での歩行となるため、まずは麻酔下での非観血的整復(手術ではなく、引っ張るなどして脱臼をもとに戻す)を提案しました。

同意が得られましたので、即日実施しました。

麻酔下では無事に脱臼が整復でき、包帯で固定した後に麻酔から覚醒しました。

非観血的整復時は、数週間を目処に包帯で固定し、再脱臼しないように安静にしてもらいます。

今回も包帯を巻いたままご帰宅頂きました。

脱臼が治り、痛み止めで痛みもマイルドになったおかげか、ご自宅で飛び跳ねてしまった時に、包帯を巻いたままでしたが再度脱臼したようでした。

再診時にレントゲンを撮ると、再脱臼が確認できました。

包帯で固定していましたが再脱臼となりましたので、今度は手術を提案しました。

手術は、再脱臼の防止、痛みからの解放、歩行機能の改善などを目的としました。

同意が得られたため、手術を行いました。

股関節脱臼の手術の方法はいくつかありますが、今回は高齢のわんちゃんでしたので、なるべく手術が早く終わる大腿骨頭切除を選択しました。

手術は無事に終わり、4日間ほど入院管理をしました。

入院中はアイシングや足を着く練習などのリハビリを無理のない範囲で取り入れていきました。

入院中にストレス性の胃腸炎を発症してしまったため、退院後は何度か点滴のために通院をして頂きました。

退院後はご自宅でもアイシングなどの簡単なリハビリをお願いしました。

その結果、手術前はほぼ完全挙上だった右足が、手術から1週間程度で、多少着けるようになり、2週間後にはある程度の負重ができるまでに回復してくれました。

術後1.5ヶ月では軽く走れるレベルにまで改善してくれていました。

まだ、右後肢の負重は弱いのですが、日常生活には問題ないレベルに回復してくれており、手術の目的は達成できたと感じています。

高齢での股関節脱臼はしばしば経験します。高齢ゆえにご家族の皆様も手術を悩まれる傾向にあります。

もちろん、非観血的整復で治ってくれればとても喜ばしいのですが、多くのケースで再脱臼が確認されます。

大腿骨頭切除は救済的な位置づけの手術で、歩行機能の完全な回復に至らないケースもあります。ですが、「脱臼したまま」の状態よりは快適な生活を送ることができる手術だと考えています。

高齢になると手術も麻酔も心配になるかと思います。当院ではなるべく侵襲性が少ない手術と安全性の高い麻酔を実施するように心掛けています。

お困りのことがあれば、お気軽にご相談頂ければと思います。

副院長 藤田

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